川崎 なるほど、処方できる病院や医師の関係でということですね。というか、お抱えだった他の疾患も改善したんですね。それに先ほど「以前はそうだった」とおっしゃっていましたが……。
おおぜき そうなんです。「あれ? ADHDの薬を飲んだら、ナルコの特徴的な症状以外の症状も改善したね、ADHDの二次障害なんじゃないの?」ということでADHDの検査を受けたところ、ADHDの診断がつきました。
川崎 ナルコレプシーの他にも疾患を併発することだってありますもんね。そのようなケースは、気になる方も多いんではないですかね?
おおぜき 決して少なくはないと思いますね。ナルコレプシーと併発していた症状に対して薬を替えたらナルコレプシーが落ち着いた、これはあくまでも私の一例なのですが、普段から自分の体調に少しでも変化があれば主治医に相談する。自分の身体にアンテナを張っておくことは大事なことだと思います。
川崎 そうですよね。自分の身体だからこそ、常にアンテナは張っておきたいですよね。現在は「ピアサポーター」をやられていると伺っていますが、どんなお仕事なんですか?
おおぜき ピアサポーターのピア(Peer)は同胞、仲間という意味なんです。障害のある人自身がピアサポーターになることができます。ピアサポーターは実際に病気を抱える「当事者」の顔と「支援者」の顔の両方を持っています。他の方と同じ病名じゃなくても、同じような生きづらさを持っているんです。
なので、病気の人が健常者に対してよく使う「お前に私の辛さが分かるもんか!」という切り札が残念ながらピアサポーターには通用しないんですよ。でもその辛さに寄り添いながら健常者より一歩踏み込んだ支援ができるのがピアサポーターの大きな強みだと思っています。
川崎 実はお恥ずかしい話なんですが、病院で理学療法士として働いていた時期もありましたが、おおぜきさんから聞くまで知らなかったんですよ。おおぜきさんはどちらでピアサポーターという仕事を知ったんですか?
おおぜき 失立失歩、読んで字のごとく、自力で立てず動けず、車椅子生活を余儀なくされた時期があり、それまでしていた音楽の仕事を辞めざるを得なくなったんです。その時は生きる希望を失いました。その上、家事ができないので、家にヘルパーが入ることになったんです。その時に出会ったケアマネがピアサポーターを勧めてくださり、人生に光が見えた感じです。
川崎 それがきっかけで知って、どうしてピアサポーターをやろうと思ったんですか?
おおぜき 始めた理由は調べていくうちに、私がこれまで隠したいと感じるような経験が、誰かの「ありがとう」になるんだと知ったからですね。ちなみに思い立ってからピアサポーターになるまで五年かかりました。体調が整わず、ピアサポーターになるために定められた寛解期間をクリアすることができなかったんです。
次回更新は6月8日(日)、21時の予定です。
👉『ナルコレプシーと生きる[注目連載ピックアップ] 』連載記事一覧はこちら
【イチオシ記事】あの日の夜のことは、私だけの秘め事。奥さまは何も知らないはずだ…。あの日以来、ご主人も私と距離を置こうと意識しているし…
【注目記事】ある日今までで一番ひどく殴られ蹴られ家中髪の毛を持って引きずり回され、発作的にアレルギーの薬を一瓶全部飲んでしまい…