神様の正装は文句なしに伊豆半島から見た富士山の麗姿であろう。ここは日本の神様が裃──カミシモ──の正装をしてお迎え下さる正面玄関である。

そして奥座敷の箱根に案内して下さる。渡り廊下の十国峠から相模湾とか駿河湾を見渡して古代から多く歌われている。

 あめつちの 分れし時ゆ かむさびて 高く貴き駿河なる

 ふじの高嶺を あまのはら ふりさけみればわたる日の

 影もかくらひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり

 時じくぞ 雪は降りける 語りつぎ 言ひつぎ行かむ

 ふじの高嶺は

反歌

 たごの浦ゆ うち出でて見れば ま白にぞ

 不尽の高嶺に 雪は降りける

源実朝も政治家でなく歌人のほうが幸せであった人だ。

 箱根路を越えさりゆかば伊豆の海や沖の小島に波の立つ見ゆ

私も愚作をつくる。

 片瀬なる岩場の海に黒潮が青く砕けて白く散るかも

伊豆半島付近の駿河湾も相模灘も海が実に明るいコバルトブルーで魅惑的であり一時期妻と共に没頭した。将軍や殿様クラスの衣装は全国どこにでもあろう。

 

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