第1章

つゆ草とスカート

雨上がりの朝、緑地につゆ草がいっぱい咲いていた。槐はつゆ草が大好きで眺めていると、遠い昔のことなのに、小学四年生の時に、母が買ってくれたスカートを思い出した。

緑色と青色の格子柄のつゆ草色だった。履くとニコニコ顔でスキップしたくなる、とても気に入って履いたスカートだった。

学芸会が近づいていた。槐はダンスをする役に当てられ嬉しかったが、みんなの前で踊るのは気が引けた。

「お母ちゃんに似てお前も内弁慶な子だね、このスカートで踊りなさい」と勇気づけられた。

ダンスのオドリコ先生は色白でパーマをかけ、はにかむ表情がかわいらしかった。三人で踊るのは、ユーモレスクの曲でオドリコ先生の振付だった。レッスンが待ちどおしくて

「起立・礼」

「さようなら」とともに槐は教室を飛び出した。スキップをしてレッスンの教室へ行く日が続いた。

舞台でステップを踏み、スカートを両手でつまみ、右足のかかとを床にトンと付き、槐を見てと、踊った学芸会は終わった。

ダンスの先生と仲良しで担任のサユリ先生は、講堂の後ろの方のぼんやり明りが射し込む辺りで、照明に浮かぶ槐の踊りを、見ていてくれた。サユリ先生は学芸会で踊った槐にご褒美をくれた。ディズニー映画『バンビ』に出てくる子鹿の絵の栞だった。

つゆ草の色合いのスカートが、恥ずかしがり屋の槐を少し前に押し出してくれた。