【前回の記事を読む】「それに、『小人』は警察の内部情報も知っていた」内部漏洩を疑った男は、情報分析官を利用し『小人』の正体を探り出す
六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内
仲山は緊張を悟られないように、ごくりと唾を飲み込んだ。そこで、金森が思い出したように話題を変えた。
『ところで仲山さん。ご一緒にゴンドラに乗っている娘さんはおいくつですか』
「あ、ああ、九歳になるよ、小学生だ」
『早生まれじゃなければ、小学三年生ですね。とっても不安でしょうね。そんな窮屈(きゅうくつ)な場所ではお腹も空くでしょうし』
「ああ、そうだな」
『保護者って大変だなって思いますねぇ。特にこういう時は』
受話器を握りながら、感心した口調で金森が話し続ける。
「あんた、子どもはいないんだな」
『ええ、まだ一人身です』
「そうか。……俺は自然と親になれると思っていたが、どうやら違ったようだ。親になってから学んだことの方が多いよ。今もそうだ。泣き喚くこともなく、俺に気を遣っている。親の想像よりもずっと子どもは成長してるものだな」
『はあ……。私にはまだわかりませんけど、そういうものかもしれないですね』
「だが結局は子どもだ。もうじき不安な気持ちが抑えられなくなって泣き出すかもしれない」
『というか、仲山さんって凄く冷静ですね。人の感情を読み取るのが得意って感じがします。優秀だったんじゃないですか?』
これにどう答えようか、仲山が考え始めた時に、会話に別の声が割り込んだ。