【前回の記事を読む】私でも気づけるサインで教えてほしいと願った結迦。「……信長さまなの?」夜明け前に現れたのは
第二幕 やさしい魔王復活
その友人は、幼少の頃から、一般には見えない存在たちが見え、また交流していたという。それがごく普通のことで、当たり前のことだと思っていたとも。その友人は今生、生まれてくる前の過去の記憶を複数持ち、壮絶な人生を体験されていた。
結迦はそんな友人と出会ってから、より見えない世界について、今もなお、学ばせていただいている。
安土のお土産を持って、結迦は友人宅を訪れた。部屋に入り、いつものソファーに腰かけると、その友人は、ふと斜め横に顔を向けたのだった。ほんの数秒後、今度は真下へとうつむいた。なにかを確認しているように、結迦には見えた。
気になった結迦は、話しかけた。
「どうか、されました? 誰か、来ているのですか?」
「ええ。お坊さんのような、んん~、黒い装束を着ている方が立っていたんだけど。なにもおっしゃらないから、まあいいわ。ご自分が死んでることを受け入れたくないのか、あるいは、気づいていなかったみたいだったし……」
「えっ? そうなんですか。どなただったのでしょうね」
その後は、黒い装束を着ていた方のことは忘れて、いつものように、楽しい語らいの時間をふたりで過ごした。
結迦がツアー中に体験した、ちょっと不思議な話も、もちろん友人に伝えた。友人は終始穏やかに、結迦の話を聞いてくれていた。
以前、友人と話している最中に、結迦の亡き母が現れたり、祖父が登場したりと、面白いことが起きることもあったのである。
結迦自身にはその姿が見えないので、ひとりあっけらかんとしてしまうのだが……霊というのは、実は、どこにでもいて、神出鬼没なのかなあと思う次第である。
祖父と母の写真を、手帳に挟んで持ち歩く結迦。なぜ、そのふたりの写真だけなのだろう? 無意識的に、なにか心残りでもあるのだろうか。結迦はそれ以上に、深く考えることはなかった。
その友人宅から帰宅した夜、結迦に久しぶりに不思議なことが起きたのである。医学的には「幻聴」といわれるものだ。また、「霊聴」「クレアオーディエンス」といわれるサイキック能力という呼び方もあるだろう。
どちらにしても、静まった真夜中に、明らかに声が聞こえたという体験を、結迦は久しぶりにしたのである。