【前回の記事を読む】「ぎゃぁぁ~」凄まじい悲鳴が耳の奥に響いた。立ち上がり、その甲高い悲鳴を耳の奥に感じながら、玄関側の窓から外を覗くと…
木々のささやき
バラの花
寒い季節が過ぎてバラのつぼみが開き始めると、サチはそれを切り花にして花瓶に挿し、書斎と居間と台所の窓際に置く。時々、サチが持ち帰るバラの切り花もシンプルなガラス瓶に分けて書斎と居間と台所の窓の近くに置く。
居間と台所に置いたバラは概ね一週間、保っても十日で枯れるが、書斎の窓際にあるバラは言葉をかけると二週間から三週間、時にはそれ以上生き、美しい花を咲かせ続けてくれる。
バラを描こうと思うと、花への想いを言葉にし、真摯に、そして誠実に語りかける。バラの花は喜びと愛情に溢れた波動を返してくれる。ボクはその優しく、柔らかく、慈愛に満ちた想いの奔流が胸の奥に流れ込むのを感じ、その喜びに満ちた愛情溢れる波動で胸の奥が温かくなるのを感じる。
そんな日はバラの絵を描く数時間、時にはその日の午前中、うまくするとその日いっぱいは幸せな気分でいられるのだ。
了
不思議と出逢うところ ――ゾーン――
ヨガスタジオを営む友人にワークショップに誘われた。講師はインドのケララ州にあるヨガ(アーサナ)の流派のひとつであるシバナンダヨガのアシュラム(道場)で修行する、スワミ・マハナンダというヨガの行者ということだった。
その日は在来線と新幹線を乗り継いで最寄りの駅に着き、そこからは迎えの車に乗り換えて、片道二時間ほどで会場に着いた。民家を改造したヨガスタジオの三十畳ほどの会場はほぼ満席で、もう、三十~四十人ほどの人が畳に座っている。
広い畳部屋の最後列には床に座れない人やお年寄り用の椅子が並べられていて、床に座るのが苦手なボクはその最後列の椅子のひとつに腰を下ろした。マハナンダさんの講話が始まった。