南ヨーロッパ生まれのマハナンダさんは、恰幅のいいイタリア人といった風貌で、生粋のインド人には見えない。その昔、バックパックひとつ担いで旅に出た欧米の若者が南インドの風土と文化に魅了されて、その土地に根を下ろしたという感じの人だった。 

話も生粋のヒンドゥーイズムというよりはむしろ欧米人の目から見たヒンドゥーの世界観といった内容で、ヒンドゥーの聖典であるヴェーダンタの本流に触れた感動はなかったが、その語り口は日本から見るヒンドゥーイズムの世界観と何かしら通じるところがあって、それはそれで面白い。

短い講話のあとはチャンティング(詠唱)が始まった。マハナンダさんのチャンティングはその大柄な身体を揺すってまるで民謡でも口ずさむように、時に、朗々と歌い上げる。見ているとチャンティングが好きなことがよくわかる。

陽気なイタリア人のチャンティングはその響きに酔ったように延々と続く。しかも長い。三十分経ったが終わらない。一時間経っても終わらない。一時間半経ってもまだ終わらない。いい加減嫌気が差したころ、永遠に続くかと思ったチャンティングがようやく終わった。

チャンティングが終わるとサットサンガ、自由討論が始まった。ワークショップが始まってからかなりの時間が経っていたので残り時間は少ない。

何人かの聴講者が手を上げる。マハナンダさんは質問者を順番に指名し、その人の質問を聞いて丁寧に答える。質疑は概ね的を射ている。

会場の最後列に座るボクは、手を上げて質問する人を後ろから見ている。そして、質問に答えるマハナンダさんを見ている。禅問答のようなやり取りが続く。

誰かが発言するとその背中にふっと光が灯る。後ろから見えるその人の背中の辺りがポッと明るくなる。会場の真ん中辺りに座る女性が話を始めると、その辺りには赤い暖色系の光がポッと灯る。

別の女性が話し始めるとその辺りは黄色い暖色系の光に包まれる。年配の男性が手を上げて発言するとその辺りは灰色の灯に包まれる。一人置いて、離れて座る若い男性が発言すると濃い青色の光がポッと灯る。