2人ともカーティムに事情を話して、パン屋さんを辞めることにした。カーティムには、また明日から1人で仕事をこなすという現実が待っていたが、のとがおじいさんのところで幸せになれるようにお祝いを渡した。

ぽろもきには、今度の面接試験を頑張るように励まして、時々パンを買いに来るように言った。

秋が去りゆく港から、のとは船に乗った。ぽろもきはそれを見送った。港には枯れ葉が舞っていて、空気はひんやりとしていた。

船に乗ったのとは、波止場から見送るぽろもきの顔を見ていると2人で一生懸命働いた今までの楽しい日々が浮かんできて、涙があふれた。

「おじいさんに会いになんて行きたくない」と大きな声で叫びたかった。でも、結局はこうすることがぽろもきのためにも良いことなんだと、無理に自分に言い聞かせていた。

その無理な自分への説得が余計に涙を流れさせた。のとの涙を見た途端に、ぽろもきは、本当に自分のそばにいてほしい人を今見送っているのだと思い知らされた。

「やっぱり行かないで。ずっと一緒に働いていて」と叫びたかったが、言葉にすることができず、その分ちぎれんばかりに手を振った。船が遠ざかっていくと、涙が足元に落ちる感覚に気付いた。

ぽろもきが小さくなって見えなくなった時、のとは声を出して泣いていた。親を失った時もものすごく辛かったが、この別れも、今までに経験したことのない辛い別れだった。