「それとも、国枝さんとあなたが何か個人的に特別親しい関係があるように見えていたということはないですかね」

「どういう意味ですか?」

穏やかに受け答えをしていた飯島めいが、初めてキッとした表情で草薙を見返した。

「あ、いや。我々はいろんなことを考えないといけないものですから。例えば、あなたに対して国枝さんが愛情のようなものを持っていた、あるいはあなたが国枝さんに特別な想いを持っていたとか」

「えっ、愛情。それって同性愛とか、そういうことですか? レズビアン? あははっ、まさか」

「それはないと」

草薙は、飯島の心理を探るようにその目をじっと覗き込んで念を押した。

「ばかばかしい。先生、確かに五十過ぎにしては若々しくて奇麗だけど、私にはそんな趣味はありませんし、そもそも先生にはいい人がいたから」

飯島は、自分が疑われていると感じたからなのか、突然態度が変わり、今までなかったようなぞんざいな言い方をした。

「いい人?」

「そんな感じでした。交際している人がいるようなことを言ってたし、私がいる時にも、よく書斎の方に行っては誰かと連絡を取り合ったりしていたみたいだったし」

飯島は、よほど腹を立てたのだろう。草薙を睨むようにして冷たく投げやりな言い方をしたが、草薙はその話に飛びついた。

次回更新は5月17日(土)、22時の予定です。

 

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