「はい。先生はいつもデリカテッセンから持ち帰りで済ませていたようです。あの日も、ワインのおつまみになるチーズや生ハムなど駅前で買って帰りましたが、メインのパスタをいつものように私が作りました」
「料理はあなたが?」
「はい。先生は、私が作るパスタを気に入っていて。それで、よくお部屋に呼んでもらったんだと思います」
「じゃ、その日もあなたが料理をした」
「はい。パスタを作って、ワインを飲みながら一緒に食べました。食事が終わってからの後片付けも私がしますので。あの日も後片付けをすっかり終えて部屋を出たのは八時四十五分頃だったと思います」
「あなたもワインを? 十九歳ですよね」
「……すみません」
確かに、死体発見時の捜査では、シンクの水切りかごに洗い終わって乾き切った二人分の大皿やフォーク、ワイングラス、ゴミ箱の脇には高級そうなワインの空ボトルが確認されていた。
「国枝さんは、あなたの料理が気に入って、それで良くしてくれていた。それだけですか? 会社でも特別に親しそうだったと皆さんおっしゃっていましたが」
「仕事のセンスがいいとよく褒めてはもらいました。使いよかった、というか使い易かったのかもしれません」
「特別に親しそうだったと皆さんがおっしゃるのは、仕事の出来るあなたをやっかんでのことなんですかね」
「さあ、よく分かりませんが」