片想いだらけの青春
プロローグ
結婚して五十年が経った。先日、音楽番組で山口百恵さんの「いい日旅立ち」が流れてくると、妻はそれに合わせて歌いだした。
── あゝ日本のどこかに 私を待ってる人がいる ──
という歌詞を口ずさみながら青春時代を思い出していたようだ。
「君には(歌に出てくる)そういう人が現れたの? それってオレか」
妻は東京に出てきてこのかた、何年も、いや何十年も郷里の桜を見ていないというので、今回里帰りに同行し熊本を訪れた。久しぶりというのと、この後いつ来られるか分からないからと、幼馴染や学生時代の友人と旧交を温めていた。若き日の交遊を思い出しては笑い転げたり、涙を流したり懐かしい時間を過ごした。
鹿児島空港で再会した一番の親友とは彼女がボーイフレンドからもらったという恋文が話題になって、笑いながら楽しそうに語り合っていた。意中でない男性からの手紙はうっとうしいばかり。一読してそのままにしていたそうだ(女心って、そんなものなのかなぁ。男のロマン、敢えなく撃沈!)。
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