出版に寄せて

香川正君、いやターちゃんとは、現在は東京都豊島区役所がある地にあった豊島区立日出小学校の同期(四年生までは同級)だ。彼の家(銭湯・龍の湯)の湯船の裏にあたる暖かい部屋(下風呂)で遊んだ記憶が鮮明にある。

中学校が違ったこともあり、五十代になるまで、頻繁に会うことはなかった。その後、還暦・古希はじめ節目のおりに、彼が同期会の幹事を務めてくれたこともあり、旅行を含め楽しい時間を共にすることが多くなった。

この書にあるように、都電が交差する地に、我々が育った日ノ出町・雑司が谷はあった。同じような青春を体験し、同じような甘酸っぱい思い出がある。

彼の古代史への造詣の深さにあらためて驚かされている。雑誌編集をしていたおりに、それを知っていたなら、と口惜しい。この書で蒙を啓いてもらうことにする。そして、邪馬台国を求め九州訪問を共にと念じている。

その前に傘寿を期しての同期会を開いてほしい。

近藤大博 元中央公論編集長

まえがき

高三の夏、気の合った仲間と伊豆へドライブ旅行に出かけた。友人は免許取り立てで、伊豆スカイラインではひやひやする場面もあったが、何とか下田の先の海水浴場(弓ヶ浜)にたどり着いた。高校生の貧乏旅行で、その夜は浜辺で野宿。星空がきれいだった。時おり流れ星を見かけた。ずーっと軌道を描いて夜空を横切っていったのは人工衛星の軌跡か。

この広大な宇宙の中で、人間って何とちっぽけな存在なんだろう。やたら自分がむなしくなって、何か生きた爪あとを残したい。そして、一生を共にする人と巡り合えたらと思った。