「みなさん、こんにちは。3年A組の池江渚です。今は松本バスターミナルにある交通案内所で観光案内の仕事をしています。最近の趣味は灯台めぐりです」
イケちゃんがひと息つくと、誰かが手を挙げて何かを言っている。どうやら質問みたいだ。
「私に質問ですか? 何でしょうか?」
「灯台めぐりって何ですか?」
3年C組だった男性が言った。
「ハイ。参観灯台という……のぼれる灯台が全国に16ヶ所あります。私は全部を訪問しました」
「誰と行ったんですか?」
今度は3年B組だった別の男性から質問が出た。
「ネットで知り合った年上の女性です。私と同じ名前の渚さんです」
イケちゃんの返答を聞いて体育館内が少々ざわつく。すると、また誰かが手を挙げた。
幹事の長谷部が合図を送ると、手を挙げた男性が大きな声で言った。
「池江さん、僕が誰だかわかりますか?」
突然の問いかけにイケちゃんは戸惑いながらこたえる。
「すみません。すぐには思い出せません」
「僕は3年C組の松原です。今日は池江さんに会いたくて参加しました!」
体育館内は先ほどよりもざわついている。幹事の長谷部がマイクに向かって言う。
「おい、松原! お前も幹事だろ。池江さんが困っているぞ……なんとかしろよ」
イケちゃんは恥ずかしさのあまり、マイクの前から立ち去り杏子たちの所に戻った。
「すごいじゃん。ナギはモテモテね」
「ナギちゃんは人気者だったのね」
二人はノンキなことを言っているけれど、イケちゃんは恥ずかしくてプチパニックだ。
「杏子が言ってたのって……あの人なの?」
「アンタ、ホントに覚えていないのね。高校時代にナギに告(こく)った人だよ!」
杏子に言われて高校2年の時に告白されたことを思い出したが、相手の名前なんて覚えていなかった。その後も何人かがスピーチをして、夕方5時になった。
「みなさん、もうすぐ体育館での同窓会は終了です。2次会に行く人は各自ご自由にどうぞ。幹事の人たちは忘れ物チェックとゴミの片づけをお願いします。以上!」
イケちゃんたちは、女性たちが集まって記念撮影をしているので加わる。そこに幹事の松原が近づいてきて言った。
「池江さん、2次会に行きましょう!」
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