【前回の記事を読む】夫は酒浸りで堕落しきった生活を送るが、それでもなんとか生活できていたのは母の懸命な労働のおかげだった。

第一章 壊れた家族

「お父さん、見て見て」

恵理の弾んだ声だ。昔から顔も声もかわいいのだ。

「そんなもん、どうでもいいよ」

祐一が振り返るとどうでしょう。恵理はすっかりべっぴんさんに変身していた。祐一は恵理のあまりの変貌ぶりに驚いたごくっと生つばを飲み込み(いい女だなー)と思った。その感情は親子とは違う何か危険な香りがする。

「いいんじゃないか」

珍しくいつも恵理には無関心な祐一が褒めた。

「ありがとう」

父から久しぶりに褒められて恵理は嬉しくなり、その場で一周回って見せた。

「お父さん、きれいでしょう。役場に咲く一輪の花ね」

智子は夫が喜んでくれたのでほっとした。何しろ、高額な買い物をしたから、怒られるかなと思っていただけに嬉しかった。この家族としては、実に久方ぶりの明るさが舞い込んだ。

しかし、祐一の喜びは危険な方向に向かう黄色信号だった。その日から祐一は、恵理に対して、あってはならない感情が芽生えてきた。既に恵理に娘としての関心はなくなっている。娘とは別の感情。

つまり、娘ではなく女として見るようになった。お尻のあたり、女性らしく丸みを帯びている。それを見るたび(あんさんええけつしてまんなあ)とはっきり言いたい気持ちに駆られてきた。

同じ屋根の下だ。大丈夫か? 恵理がべっぴんさんに変貌したから、祐一はエキセントリックな変態おやじに変貌していった。