「いや、あんな噂はデマだと分かってる。俺が聞きたいのは、なぜ犯人は沙代子を襲ったのか、その動機だ。沙代子は人に恨まれるような人間ではないし」

春くんは同意するように頷いた。

「犯人の身元は分かった。沙代子さんの勤める店で、犯人がケーキを買ってる様子が防犯カメラに映ってた。でも、普通に笑いながら会話して店を出てるんだ」

「常連か?」

「いや、常連といっても月に一度来る程度らしい。店長に話を聞いたが、マスコミが騒いでいるような関係ではない。お前も分かってることだが」

そこまで話すと、春くんは気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりとコーヒーカップを口に運んだ。

「だとしたら、無差別に襲うような通り魔じゃないってことか」

父の声が震える。

「ああ、これから人を殺そうと思う人間がケーキを買うか疑問はあるが、凶器のパイプとナイフから指紋は出てるし、沙代子さんを助けようとした高校生にも事情聴取した。当の犯人は自殺して、動機は分からずじまいだが」

春くんは真剣な表情で状況を説明した。

母の魂が春くんの頭の上で、何かを訴えるかのように揺れ動く。

「その、沙代子を助けようとした高校生に会えないか?」

春くんの頭上を見つめていた父が口を開いた。

 

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