【前回の記事を読む】数字を打ち込むだけで所定の書類が出来上がったり、予約、スタッフのシフト管理まで、メグ先生が作ったシステムで動いているなんて…
メグ先生の一日
十二時から一時まではお昼休み。先生と朱美さんは急患があるかも知れないからって自宅から出ない。実際、連れてくる人がちょくちょくいる。病院のインターホンが自宅にも繋がってて、メグ先生と朱美さん五階の自宅から下りてく。
この前は、小さい子がお母さんと虫かごに入れたモルモット連れてきた。
「小さい子はあまり診たことないんだ。ちょっと元気がないな。ちょっと待って、詳しい先生に電話するから」って言って、ズームでもやり取りして、
「簡単なお薬で治るみたいだよ。ちょっと待ってね。薬剤師さんに聞くから。……また、おかしかったら、この先生のところで診せて。静岡だけど、これその先生の医院の地図。話をしてあるから、お名前言えば分かるよ。小さな生き物には凄い先生だから、連れていって。ごめんね、勉強不足で。今日はお金いらないよ」
朱美さんは「良くなるといいね」って手まで繋いであげて、エントランスまで親子を見送った。一時から四時までは予定していた患者さんの手術時間。よそのシェルターの子たちの去勢、避妊手術も格安で引き受けている。近隣の県からも来る。多い日は、三十匹ぐらい高橋先生と手術する。
時々、病気の子もいて、即入院、お預かり。汚い子たちは、由美さんのトリマー室に連れていって、バイトさんたちも総がかりで洗う。
手術の予定が少なかったり、入っていなければ二人の先生は通常診察に切り替えて、ホームページやラインでお知らせする。
空き時間ができるとメグ先生は診察室でネットで論文見たり、書いたり、本読んだり、他の部署を見に行って手伝ったりしてる。洗濯屋さんの汚れものの仕分けまでお手伝いしてる。
閉院六時までみっちり働く。でも、とにかく時間割がとても上手だ。スタッフのローテーションの中にはマンションのお掃除なんて重労働もあるけれど、きちんと休ませる。マンションの二階の一室を区切って六人が横になれる仮眠室もある。
若い連中が、外で飲み過ぎて帰れない時は一泊二千円で泊まれる。シェルターをホテル代わりに犬猫を預ける飼い主さんに請求するのも休憩・お泊り、いずれも二千円。一回、バイトの子がパーティの帰りに仮眠室に十人も連れて泊まった時は、さすがにメグ先生に怒られたらしい。