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「残り二人の人物の特定に時間がかかっていますが、そのうちの一人が判明しそうです。田代正樹、四十六歳の可能性が高い。カズコブランド社の社員の多くから、出入りのアパレル業者に似ているとの証言が得られました」
西城警察署三階の大会議室で開かれている百名を超える捜査員全員が揃った報告連絡会議で、警視庁捜査第一課の宇佐見修二刑事の報告が続いていた。
長身でがっしりとしたその体つきは、永年柔道で鍛え上げられたものだ。職人風に短く刈り上げられた髪に白いものが混じり始めているが、年齢はまだ四十歳そこそこで、若手ホープの一人だ。
「似ている? 本人とは確定出来ないのか?」
捜査の指揮を執る管理官の警視庁刑事部捜査第一課課長補佐、植村敏男が眉根を上げて宇佐見を見た。こちらもがっしりした体型だが、宇佐見ほどの上背はない。
豊かな髪に太い眉と大きな目。鼻筋の通ったその精悍な顔つきは、人からよく俳優の北大路欣也にそっくりだと言われる。
「はい。お配りした写真をご覧下さい。防犯カメラに映っていた人物の写真です。長身の男性の方ですが、長髪で眼鏡をかけています。皆の知っている田代正樹は眼鏡をしていないそうで、しかも髪はスポーツ刈りに近い短髪だそうです。ただ、この長身の姿、顔かたちが田代正樹にたいへん似ているとのことです。現在、誤認のないよう慎重に確認を進めているところです」
「もう一人はどうだ?」
「……」
一瞬言葉に詰まった宇佐見は、助けを求めるように横の机に座る堺伊佐夫刑事を見た。
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