第一章 アジアへの憧憬と初めての店創り
1 最初の店は雇われ店長から
あなたの感性を生かしてお店をやってみない?
いつか自分のスペースを持ちたいとずっと思っていました。でもシングルマザーの私には開店資金もないし、お店の経営もわからない。だからそんな場所ができるのはずっと先だと思っていました。ところがある日、ある講座でご一緒した方から、お声をかけていただいたのです。運命の歯車は人との出会いから、どんどん加速して動き出すようです。
その方は会社を経営されているのですが、持病を抱えて体調が思わしくない。自分でも自然食品を愛用しているが、近くに扱う店がない。自分には店をやる体力はないが、本業が順調なので、税金を払うくらいならお店を作りたいというお話でした。
でも何よりお誘いの言葉がとても魅力的だったのです。「あなたの感性を生かしてお店をやってみない? あなただったら、きっといいお店ができると思うの」。この言葉にもうノックアウト! 断る理由を見つけることはできませんでした。
何度か打ち合わせを兼ねてお食事をしたり、現場に行ったりするうちに(最初からやると決めていたのですが)私はそれまで働いていた生協の仕事を辞めて、その方の下で新規の自然食品店を立ち上げることにしました。
「30坪近くある広い物件を借りるので、食材以外のものも、たくさん並べて楽しい店を作りましょう」と提案があり、店のコンセプトから商品構成、内装など全て任せていただけることになりました。
いわゆる「雇われ店長」という立場でしたが、いつか拠点を作りたかった私にとっては思ってもみないチャンス! 素敵な商品をいっぱい並べて思いっきり楽しい店を作ろうと夢と希望に満ち溢れ、開店準備に着手しました。
何しろ商売をするのは初めて。見本市に行ったり、メーカーに出向いて、いろいろ話を聞いたりして商品構成を決めていきました。私自身がベジタリアンで、自然食材を日常的に愛用したり、ある程度、自然療法などの知識があったので、それがとても役立ちました。
店の内装をイメージしたり、ロゴやフライヤーを作成したり、アルバイトを募集したり、寝る間も惜しんで、お店作りに向けて準備しました。
ガランとした何もない状態のテナントだったので、バックヤードやトイレ、流しなどを設置し、入り口や什器、カウンターなどの配置を決め、当時、親しくしていた建築家の彼に内装デザインを依頼しました。店内とフロントには土壁を塗り、天井には和紙を貼り、棚も古材で作るなど、とてもおしゃれな店が2ヶ月後に完成しました。
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