祐介の肩にもたれ掛かるように寄り添って暖をとる。

「春に出会って冬になったから四季を過ごせたね」

祐介が手を回して私の反対側の肩を温める。

「俺、四季を一緒に過ごしてから決めようと思ってたんだ」

「何を?」

「里奈、俺のお嫁さんになって」

祐介はポケットから小さな赤いルビーのような石が付いた可愛らしい指輪を出した。そっと私の手を取ると右手の薬指に通す。

「もちろんすぐにってわけじゃない。里奈が大学卒業してから」

嬉しくて祐介の首に両腕を回す。祐介の見えないところで涙を堪えながら力いっぱい抱きしめた。

「里奈?」

「うん。お嫁さんになる」

「良かった」

祐介は私の頭を撫でてくれた。祐介の手は大きくて頭をすっぽり覆う。この手から伝う優しさと愛情をずっと私だけのものにしたかった。手を伸ばして指輪がよく見えるように外灯の明かりに照らすと、日焼けをしていない真っ白な私の手に、ピンクゴールドと小さな赤い石が綺麗に光を放っている。

会えない瞬間でもこれを祐介だと思って頑張れる気がした。次の春から私は美術大学の受験に備えて、絵の予備校に通うことになっている。平日の放課後会えなくなる。これまで毎日会えていたから、突然会えなくなる事へ不安がっていた私を気遣っての、とっておきのサプライズだった。

「ごめん。私は何も用意してなかった……」

「里奈がいてくれたらそれで良いから」

二度目の公園でのキスは、ファーストキスよりももっと暖かくて、体から愛のエネルギーが放出されるような感覚だった。

次回更新は4月22日(火)、21時の予定です。

 

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