この家で明るい食卓を囲んだのはいつ以来だろうか。父が家を出て、次に兄が出て行ってから平和は訪れていたけれど、母と前のように仲良くできないでいた。

どこかで父への怒りを母のせいにして発散していたし、基本は部屋に籠って携帯の中の世界で暮らしていたからだ。

しかし、祐介と付き合ってから私は居場所を手に入れた。甘えられて頼れるそんな存在でいてくれて精神も安定し、寂しくもなくなった。その余裕から母にも優しくできるようになり、こうして三人で顔を合わせられたことも、私の中では大きく前に進めた証拠だ。以来、週に数回は祐介を自宅に招いて三人で食事をするようになった。

「このマフラーはどう?」

「いいね。俺にも似合う?」

「うん! 黒髪で黒コートに白いマフラーが大人の男性って感じで似合ってる」

クリスマスは私のお願いでペアの物を買いに行った。サプライズも良いけど、金銭面で負担にならないように、欲しいものを一緒に買うのが今の私たちには丁度良い。お揃いの何かに憧れていた私は、どちらにも似合う真っ白のマフラーを選んだ。

買い物を終えた私たちは中華を食べた。祐介の家に戻る前に、寄りたい場所があると言われ、向かったのは近所の公園だ。

「初めて告白した公園。ここに来たかったんだ」

「懐かしい。あっという間に冬になったね」

「座ろう」

「冷たい!」

木製のベンチは真冬の冷気で冷え切ってお尻から寒さが伝わる。

「マフラー着けようか」

買ったばかりの真っ白のマフラーを祐介が巻いてくれる。祐介には私が巻いた。