その頃、近所に可愛らしい女の子が引っ越して来た。一人っ子の美少女で僕より学年が一つ下だった。
僕は野球でカッコいいところを見せて、その子の気を惹きたいとも考えたが、「運動よりも勉強をできる子の方が、今はもてるのよ」とクラスの女の子に言われて、僕は勉強に励んだ。
「私立の良い中学校に入った方が、僕のお目当ての女の子に好きになってもらえるかも」と思い、中学受験の勉強に気合いを入れる。
父は、僕ら姉兄弟の勉強に関わることはほとんどなく、僕らの勉強を見て管理するのは、専ら母の役目だった。
勉強を面白いと思ってやっていたことはあまりなかった。しょうがないと思ってやっていた。
ただ、試験に受かれば、良いことはあるだろうとは思っていた。そう、中学生になったら思いっきり野球をできるとの思いがあった。だから、遊ぶのを我慢して頑張れたのだと思う。
親は少しでも良い中学や高校、そして大学へ子供を行かせて、なるべくなら良いところで働いてもらいたいと思っていたのだろう。
僕は、そんな親の思いや期待などより、とにかく中高一貫校に行き、野球でトップクラスになることを夢見ていた。
プロ野球の選手になるのも小学生の頃は諦めておらず、「絶対になる」というほどの気合いまではなかったが、「なれる可能性はある」と思っていた。
僕が受験しようとしていた中学には軟式野球部、高校には硬式野球部があり、広い野球グラウンドを持っていた。他のスポーツも含めて文武両道の学校だった。
「頑張れば、もしかしたら甲子園にも出場できるのでは」と僕は思っていた。
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