母も、食事の準備や家事が終われば、僕の勉強を見るのが自分の仕事と考え、夜の九時頃から母の監視の下で僕は勉強に励む。
「あなたは、漫画ばかり読んで、本を読まないから国語が全然ダメなのよ。それじゃあ、まず、この問題文を読んで!」
国語の勉強の特訓をいつも受ける。
僕は国語が苦手なのか、自分ではわからなかった。計算は比較的得意で算数の方が得意だとは思っていたが、国語がダメだと自分では思っていなかった。
ただ、母に「ダメだ」と言われると、「本当にダメなんだろうなぁ」とぐらいに思っていた。
「僕は、算数は得意だけど、国語もそんなに苦手じゃないよ」と母に言う。
「何を言っているの! 算数だってお兄ちゃんの方がよっぽどできたじゃない! 国語の点数を見てごらんなさい。いつも低い点数ばかりじゃないの」
こんな口論ばかり母と僕がやっているものだから、心配して時々姉が間に入ってくれる。
姉も自分の勉強などで忙しい時もあっただろうが、こんな時は、姉が僕の勉強を見てくれた。そうすると、僕も素直な気持ちで勉強に臨み、ものすごく勉強が捗った。
小学校五年の頃から中学受験のための塾に通った。中学受験に合格し私立校に入れば、中学、高校一貫なので、中学では野球部に入れる。野球に没頭できる。そんな希望を持って頑張る。
この年の秋、巨人の長嶋選手が、「我が巨人軍は永久に不滅です」とスピーチして、プロ野球選手を引退した。
受験勉強に精を出し始めていた僕も、この時ばかりはテレビにかじりつき、偉大な野球選手の最後に感動を覚えていた。
小学校六年になると、中学受験の勉強に益々注力し、野球をやる時間は少なくなる。それは仕方なかった。