【前回の記事を読む】「やばい」と思うと、ガチャーン! すごい速さでボールが他人様の家の窓ガラスを直撃。…狭苦しくて家ばかりあるこの環境が悪いんだ

第1編 野球との出会い

1回裏 大失態の初ホームラン

小学生の頃は、長嶋茂雄選手と王貞治選手が大スターとして日本中の絶大な人気を誇っていた。

夜の八時からテレビの野球中継が始まる。ナイターのカクテル光線に照らされる選手のヘルメットは光り輝き、「何て美しいのだ」と思った。そして、選手たちの一挙手一投足に興奮しながらテレビにしがみついて観ていた。

終盤の丁度盛り上がった場面で「大変残念ではございますが、野球中継終了の時間が迫ってまいりました」とアナウンサーが言って、テレビ中継が良い場面で突然終わってしまう。そのようなことは日常茶飯事だ。

「畜生、良い場面だったのに!」こんな悔しい思いをしていた人は、僕の他にもたくさんいたはずだ。

勉強は、どちらかといえば、親から言われて仕方なくやっている。野球は、自分が好きで、進んでやっていた。ちょっとでも暇な時間があればグローブとボールを持って外に出て、壁にボールを当てて野球の練習をした。

野球の漫画も好きだった。活字だけの本は、なかなか自分から読む気はしなかったが、野球漫画は自ら積極的に読んだ。

母は、僕が当然、一生懸命勉強をしているはずの時、野球の漫画を読んでいるのを見つけると、「コラーッ、何やっているの! 勉強をやらなきゃダメでしょ!」と言って、叱った。

食事の準備をしながら、僕みたいな三人もの子供の行動を見張るとなれば大変だが、姉や兄は、それほど母を困らせるようなことはしていなかった。