【前回記事を読む】結婚以来、専業主婦で不安のない日々だった。…しかし今は、世間の常識からかけ離れて独走している。夫は黙って私を見ていた。
倶楽部の行方
夏の喧噪の日々を過ぎて九月に入ると別荘地は静けさを取り戻した。倶楽部は常時スタッフに任せて、週末になると東京から二人で訪れることが習慣となっていた。ピンポン台の導入にはまだ至っていなかった。
ただ、一回の企画展であったとはいえ週末になるとこの倶楽部は賑わいを見せていた。
夫は東京とは異なった高原で過ごす週末に期待を抱いていたが渋滞に巻き込まれつつ訪れる倶楽部はざわついていて、妻も気ぜわしく、食事も不規則にして満たされず、描いていた日々とは程遠かったのであろう。夫の不機嫌さはつのる一方であった。
あのこけら落としの未成熟であったかも知れない企画展。その名残りを引きずっているかのように、私にしても予期せぬ方向に進み始めていることへの戸惑いは充分に有った。
夫にしてみれは尚更で、全く思いもよらぬ日々に至っていることに週末が近づくに従い不満が巨大化する。
オレは今回は行かないぞ。何だって単純な丸投げタイプの夫とはいえ昭和一桁の九州男。理解は出来ていた。
日曜日の夜渋滞の中、東京に戻るという不満の連鎖。ここに至り別荘に対する着地点の相違。
一人独走を始めていたこの女こそ反省すべきではないのかと自問が湧いたりもする。周りを見ずにただただ素人が邁進している様子は荒馬に似ている。