11月28日(土)
日柄もの

今日は初冬の好天で気持ちが良かった。道路に面する生け垣の白侘助が、次々と花をつけている。この椿は花期が長く、来春まで咲き続ける。ウグイスはしきりに蜜を吸う。ムクドリは時折、花びらそのものを食べる。道路に花びらがいっぱい散っている。私は丁寧に掃いた。

今日は日中都内に用があったので、良子を見舞って、その足で行こうと思った。

8時半に病室に入った。

良子は明らかに昨晩より好転していた。それを言うと、「日柄ものやからね」と言った。

「何やそれ」

私はその言葉を知らなかった。お日柄も良く、というのは結婚式でよく使われる。しかし明らかにその意味でない。

「お父さん、そんな言葉知らんの? 帰ったら辞書で調べてみ」

とは言うものの良子も、ナースから教わった言葉であるらしい。私たちの会話に初登場の言葉である。なかなか良い語感の言葉だ。

どうやら、時が解決するという意味のようだと見当をつけた。日にち薬という言葉は知っている。それに近いのであろう。

「真央ちゃん、転んじゃったなあ」

「体にキレがなかったね」

昨夜帰るとき、NHK杯フィギュアにチャンネルを合わせておいたのであるが、見ずに音だけ聞くように言っておいた。疲れると思ったのである。しかし見たのだった。私はテレビをつけて帰って良かったと思った。

「羽生君は素晴らしかった」

良子は男女全部見たのだ。

私自身は見なかった。

夜にあい子と病室を訪ねた。

ベッドを起こし、テレビを目線の正面において、NHK杯フィギュアスケートを見ていた。羽生が演技を終え採点の掲示を待つところであった。

「羽生君、見事やったわね」

得点は322.40と出た。画面の羽生の顔が輝いたが、私たちも声を上げた。

随分良くなった。懸案はオナラである。まだ出ない。早く出てほしい。

促すように私は見本を一発やった。あい子が睨んだ。

次回更新は4月24日(木)、20時の予定です。

 

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