救いは、良子が首尾一貫、明るかったことである。

今日も手を振って、笑顔で手術室へ入って行った。

13時15分に手術室に入り、18時40分に手術が終わった、先生の説明がある、とナースが呼び出しに来た。

私とあい子は手術室入り口の受付へ向かった。

B先生が出て来て、切り取った部位を示した。その大きさに驚いた。

先生の目つきが、先日の事前説明のときとはまるで違っていた。

死闘をしてきた獣の目であった。私はこの医師を信じた。

特別なことはなかったとのことであった。順調に終えた、と言われた。

「リンパ節、他臓器への転移」についての私の質問に対して、

「病理検査の結果が出るまで、確かなことは分からない」

とのことであった。しかし少なくとも視覚上は、変異は認められなかったのだろうと、私は理解した。

医者と政治家は逆であると気付いた。

政治家は良いことばかりを公約し、医者は最悪の可能性を告げる。

19時15分に良子は病室に戻った。

しばらく私たちは外に出された。酸素マスクが装着されており、モニターが設定された。

「順調だったと先生は言っていたよ。がんばったね」

良子はかすかに笑った。しんどそうではあったが、顔色も良かった。

私たちは、「今日はもう帰るね」と告げて、短時間で病室から引き上げた。

今日、ソウルで、3年半ぶりに日韓首脳会談が開催された。

日韓の友好に異議はない。しかし日本人の韓国に対する感情は、元に戻ることはないであろう。あまりにも執拗に痛めつけられた。

  

次回更新は4月11日(金)、20時の予定です。

 

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