桜子とも話し合った。
「後継者のこと、大切とおもうけど、ウチは無理え」
桜子は眉毛を寄せて沈痛な顔で告げる。
「うん。そうなると、桜の園のすべてをあんたや麻美に残されへんけど、納得してくれる?」
夕子の声が落ちた。やはり身内が跡を継いでくれないのはつらい。すでに悠輔の声はまったく聞こえないが、
(おれのことは忘れたらええ)と夕子の心が彼のおもいを復唱できた。
桜の園は夕子独りでどうかしなければならない。
「かあさん、やはりウチに来なはれ」
桜子はまた、同じことを繰り返している。夕子は桜子の言葉が内心嬉しい。今どき、こんなことを言ってくれる肉親はあまりいないのだ。経済的に余裕がある子どもたちは親を施設に入れたがる。
家庭にごたごたを持ち込みたくないからだ。イギリスのナショナルトラストのようにあの桜の園を買い上げて永遠の桜の園にしてくれる人や企業はいいへんかな?
桜の園の管理をネットで募集したら財産を狙った詐欺グループがきっと暗躍する。今は樹木葬などが人気だ。桜墓園などと銘打って良いことを並べ立て机上の空論を言い立て、うまく騙した暁には、全部を売り払い、札束をバッグに詰め込んで夜逃げするに違いない。