娘のマンションは狭い。茶を飲みながら部屋中を眺め、隅に背もたれの高い細身の椅子に目がいった。

純白が気に入った。

(純白と桜色は合うのや)と夕子は唐突におもった。

「お洒落な椅子だとおもったんやけど、今は邪魔やねん」と桜子は夕子の視線の先を感じて言い、「あん椅子なあ、背もたれが梯子みたいやろ? ラダーバックって言うんえ」と続けた。

「あんた、また他に何や買いたいんと違う?」

「うん、正直言うと、ロッキングチェアがほしいねん。子どものころからの憧れえ。そやけど、置くとこあらへん」

「ほな、あの真っ白なラダーバックの椅子、いらへんな」

「ああ、王妃の椅子と呼んでるんえ。そやけど、どないして持って帰る?」

「かついで帰るえ」

夕子は微笑みを返した。

「無理や。なんぼ気張っても町から桜の園まで、どないあるか。峠一つ越えんならんえ。ついでのおりにウチの人に運ばすわ」

「おおきにありがとさんやけど……」

夕子は内心嬉しかったが、でも悪いわ、というふうな科(しな)を作り、娘にさえおもうままに素直になれない自分に、何やってんの、とおもった。

「ところでどこに置くん?」

桜子は夕子の顔をじっと見て言った。