ピッポ逮捕

ピッポは警察のお世話になったことがある。日頃の引っ張る力が強かったせいか、あるとき首輪の金具が壊れて放し飼い状態となった。これ幸いと、ピッポは一人で散歩に出たらしい。あるいはご近所の猫が通りかかって、追いかけたついでに遠出を決め込んだのか。

午後も早めに帰宅した私は、壊れた首輪が転がっているだけで、犬の姿が消えているのに気がついた。

一回り近所を歩いて、ピッポを呼びながら生垣の陰や路地裏を探してみる。いそうにないと判断して、次は車に乗って近隣を回ってみる。窓を全開にして、ピッポの名を呼びながらゆっくり車を走らせる。

後続の車にクラクションを鳴らされて、慌てて加速してみたり、遠くのあぜ道でもひょこひょこ歩いていないかと見回したり、脇見運転の危ない犬探索を続けた。

一時間以上探し回っても見つからず、さてどうしたものか、と頭を抱えた。

もしかしたら、交通事故にでもあったか …… 今頃は路上で冷たくなっているのかもしれない。

いやいや、走るのが大好きでいくらでも歩き回るピッポのことだから、上手に車を避けるだろう。あるいは、大きな犬に近寄って噛まれたか。犬好きに拉致されて連れ去られたか。

不安と心配で、想像が果てしなく悪いほうへ悪いほうへと膨らんでいく。

探しても見つからないとなると、まずは迷い犬の届けを出しておいたほうがよい、と思い当たった。警察では、犬は遺失物扱いとなる。

遺失物とは、まさに物扱い。生命のあるものというより飼い主の所有物ということだろうか。

幸い歩いて五分ほどのところに、警察の本署がある。免許証の更新などでお世話になっているので、電話をするのもいいが直接届けを出しに行ってもいいかなどと考えながら、それでも最後の頼みの綱で、もう一度探してみようと車に乗った。

時計の針は四時を回りかけていた。

車の往来の多い国道をそれて、脇道へ折れる。さすがのピッポでも、大型トラックがビュンビュン走る国道は避けて通るだろう。いくら歩道があるとはいえ、信号が青だろうが赤だろうがお構いなしに突き進むわけにはいかない。

車をゆっくり走らせながら、前方に目をやると、恰幅のよい男性が犬に引っ張られながら歩いてくるのが見えた。

「あれは、ピッポ?」

  

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