【前回の記事を読む】『地球の歩き方』を片手に、古都ジョグ・ジャカルタにあるプランバナン遺跡群の中心寺院「ロロ・ジョングラン寺院」へ

第五章 インドネシアの旅を楽しむ

初めてのインドネシア旅行

ロロ・ジョングラン寺院を出るとガイドと別れ、灼熱の太陽がギラギラと照りつける中を広大な公園の一番奥にあるセウ寺院に向かった。

セウ寺院は仏教寺院であるとのことであるが、入り口の両側には、威圧的な姿をしたヒンドゥーの守護神であるクベラが短剣を右手に持ち、大きな目でにらみつけ、待ち構えている。

奥に進むと、数多くの塔が崩れ落ち、頭部のない像が放置され、黒い瓦礫が散乱している。快晴であるにもかかわらず、そこには暗く重い空気が漂っていた。

翌日、ホテルのレセプションで教えてもらった通り、近くにあるバスの停留所からトランス・ジョグジャで終点のジョンボル・バス・ターミナルまで行った。このバス・ターミナルはずいぶん街はずれにあり、薄暗く寂れている。

バス・ターミナルの職員にボロブドゥール行きのバスの乗り場を尋ねて、そこで十分ほど待っていると、小型の汚いバスが来た。

「バスはスリが多いので気を付けるように」と『地球の歩き方』に書いてあったので、財布を入れているポケットのボタンをしっかり留め、緊張して乗り込んだ。座席の間隔はまるで幼稚園バスのようにやたら狭い。

バスは観光客向けというより地元の足のようで、途中から乗ってくる客や降りる客も多く、立っている乗客も増えてきた。小型バスはドアを開けたまま、のどかな田園地帯をバリバリと大きな音を立てて快走する。私は全く身の危険を感じることなく、ボロブドゥール・バス・ターミナルに到着した。

バス・ターミナルからボロブドゥールの方へ歩き出した途端、ベチャの客引きが次から次へと寄ってくる。ムンドゥッ寺院まで行くことを条件に四万ルピア(約四百円)で借り切ることにした。

ベチャを降りて入場券売り場の方に歩いていくと、今度は何人もの物売りが土産物を売りつけようとしてしつこく付きまとう。私は入場券売り場で切符を購入すると、ボロブドゥール史跡公園の敷地に逃げるように入った。

密林に囲まれたボロブドゥール遺跡