【前回の記事を読む】あるお爺さんの1日 〜花の下にて〜 「右手には紙の袋を提げています。いつもより速く横断歩道を渡り終えました。」

あるお爺さんの1日 〜花の下にて〜

紙袋から出した碁盤と碁石を消毒用のティッシュペーパーで丹念に拭きました。綺麗な柾目の碁盤でした。線も黒々としっかり引かれています。裏側には持ち主であった人の名が墨で書かれていました。遺産整理の時、家族が手放したのかなと、お爺さんは余計なことを考えました。

碁石は一つずつ丁寧に磨きました。ほこりが取れると、黒い碁石は那智黒、白い碁石は蛤でできているようです。碁笥(ごけ)は檜。お爺さんは良い買い物をしたとにっこりし、コロナの流行が収まり、老人施設で碁が打てる日が1日でも早く来ることを祈りました。

そうそう、それまでに、少し碁の勉強をしておかねばならない。学生時代、昼休みの短い時間に弁当を食べながら打ち、大学を卒業してからも研究室で時間の合間に打っていたのでじっくり考えて打つ習慣がない。ひどいざる碁だ。若い頃読んだ碁の本をもう1度読もう。碁のソフトも発売されている。忙しくなるぞ。お爺さんは喜びを感じていました。

あるお爺さんの1日〜野球〜

1度減りかかったコロナ患者の数は再び増加の傾向を見せ始め、インフルエンザの患者も多くなっています。流行は若い人が中心になっており、電車の中で若い人達がマスクをしてない姿が多く見られます。せめて大勢人が集まるところではマスクをした方が良いのではないかと思っています。

お爺さんは高齢者なので罹れば、死亡するかもしれません。暑くて、煩わしいのですが外出の時は必ずマスクをしています。

長いコロナの流行のため老人施設ではボランティアの受け入れは行わなくなっています。今日は日曜日です。お爺さんは散歩のコースを変え、少し遠いのですが小学校まで行くことにしました。

日曜日には、小学生が野球の試合をやっているのです。校庭は道路より低いところにあり、校庭に下りる階段から試合はよく見えました。いつもは校庭に入ることはしなかったのですが、すぐ近くで見てみたくなり係の人に話をすると、快く承諾してくれて椅子まで用意してくれました。

小学生も5年生、6年生となるとたいしたもので、投手の投げる球はかなりの球速がありました。コントロールはあまり良いとはいえませんが、四球の走者は出しません。ゴロの捌き方や送球はなかなかのものです。

お爺さんは一生懸命見ていました。自分の小学校の頃を思い出していたのです。軟式のボールで野球をやったのは小学校6年生の時でした。三々五々、近くの空き地に集まってやったものです。用具がなかったためお互いに貸したり、借りたりしていました。