勝也の当時の仕事は下請けで、その日の仕事は何があっても休む事も延期する事もできない仕事だった。リーダーのおっちゃんと年上の先輩と勝也の3人、もし誰か一人でも休むと大変な事になる。
リーダーのおっちゃんは凄く厳しく怖い人だった。勝也は下手に言い訳をしても無駄だと思い正直に話す事にした。するとおっちゃんは意外にも「ここに来る前の事やから仕方ないな。次はないぞ」と言ってくれた。
ほっとした勝也が日時を伝えると、
おっちゃんは当日、ギリギリまで仕事してから行けと言う。勝也は内心「えーーーっ」と思ったが、うなずくしかなかった。
仕事は早い時で深夜3時、遅い時で4時半から始まる。その日の仕事は何時からだったか覚えていないが、得意先のお客さんを2件ほど終わらせて家に帰った。すると、既に刑事が4人も待っていた。勝也はドロドロの作業服で臭いも凄かったので「風呂だけ良いですか?」と言った。
刑事も嫌がるほどの臭いと汚れだったので、勿論OK してくれた。風呂から出ると、事件当日に着ていた服と写真があれば用意するよう言われ、それらを持って連行された。勝也はこの事件での最後の逮捕者だったので、事情聴取や面倒な事はなく、事はすんなり進んだ。
留置所から拘置所、そして少年鑑別所へと移り、約1ヶ月の間、反省の日々が続いた。勝也はこの事件で一緒に暴走した数人の同級生の中のリーダー格だったので、下手すると少年院まで行くかもしれないと言われて不安で仕方なかった。
そして最終日、勝也は荷物を纏めて裁判所へ向かった。裁判官から何を言われたのか覚えていないが、初犯だったので少年院には送られず保護観察処分。今まで悪い事ばかりしていたが、運良く一度も捕まった事がなかったからだ。
勝也はこの時に、これからは仕事一筋で真面目に頑張ろうと固く決意した。