それでもまったく自信は生まれなかった。それどころか、模試に失敗するたびに自分の能力の無さを嘆いていた。ネガティブ志向がとても強かった。
その頃、唯一テレビ番組で見ていたのが、日曜日の夜8時から放映されていた『おれは男だ!』だった。特に好きだったのが、森田健作氏(元千葉県知事)が歌う主題歌の『さらば涙と言おう』で、2番の歌詞のくだりは、精神的に苦しくなると自然に口ずさむようになった。高校時代は意外にこの歌に助けられたのかもしれない。
その後、東京で1年間浪人生活を送ることになった。予備校の行き帰りにしょっちゅう口ずさんでいたし、日曜日夕方は住んでいた寮の近くを1時間ほど散歩したが、その際はかなり大声で歌っていた。この歌は本当に、精神的に不安定な10代後半の心の安定剤となった。
実はじつは、主人公「小林弘二」のように思い出いっぱいの高校時代を送りたかったのではないだろうか。心の奥底では、受験勉強に没頭したせいか思い出が薄い高校時代をもう一度やり直したいと思っていることは事実だろう。来世でも覚えているといいのだが。
第2章
自分の特徴を理解するには多様な経験が必要だ
受け身の姿勢から脱皮し、自らの意志で前に進む
M君との対話
(生存バイアス・現状維持バイアス・学業的自己効力感)
M君 おじいちゃんはすごく頑張って勉強して、東大に合格したんだね。
おじいちゃん うーん、おじいちゃんのこれまでの話は、M君にだいぶ誤解を与えてしまっているかもしれないな。おじいちゃんの高校時代は昭和40年代のこともあり、あんな無茶な勉強法をとったけれど、これは皆に当てはまることではないよ。あの時代のおじいちゃんには、たまたまうまくいったと考えてもらったほうがいいかもしれないね。
現在は、昔と違っていろいろな勉強法があるから、それを踏まえて勉強方法を考えてみるといいよ。最近、おじいちゃんが一番気に入っている方法は、動画を用いたオンライン学習コンテンツによる学習方法かな。
これで、ときどき、英語や情報技術の勉強をしているけれど、理解できなかったところは何度でも見られるし、再生スピードも変えられる。日本語であれば1・5倍速で見てもまったく問題ないから、時間が限られているときはとても助かるね。50年前に、こんな勉強法があったら、状況はだいぶ変わっていただろうね。おじいちゃんは、かなり早く生まれてしまったということかな……。
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