この言葉も入れ、自分の経験やこれからの意気込みなどを交えて文章を作った。先生にも見てもらって原稿は完成した。これからが問題である。
大勢の人の前で話すには、自信を持って大きな声で伝えなければならない。全文暗誦することにした。何度も何度も頭の中で繰り返す。口の中でモゴモゴ言いながら、何日間かはそのことだけを考えていた。
当日 ……やれた! もちろんドキドキしていたが、壇上に上がるとクソ度胸というか、見上げているみんなの顔を眺めることができた。冬なのに汗をかきながらも、ちゃんと人の前で話すことができた。この出来事は、それまでの自分を変えてくれた一大事であった。
しかしこれを契機に劇的に人間が変わったわけではない。おとなしい女の子のままだったが、いざという時は自分でもやれるのだという自信は持てた。大役に抜擢してくれた担任の先生には今でも感謝している。あの経験が私を変えた第一章の始まりといえる。
長岡は雪が多いことでも有名である。今でこそ主要道路は融雪パイプが埋められているが、一晩で一メートルも積もることはよくあった。雪かきは毎朝の仕事。重労働である。屋根の雪下ろし、下ろした雪の処理。真冬でも汗びっしょりになる。やっとやり終えたと思っても、一晩過ぎればまた雪の山。子どもも年寄りも家族総出の作業である。
雪国の人は我慢強いといわれるが、我慢するしかなかったのである。自然には逆らえない、という現実を受け入れてきたためかもしれない。私という人間形成上、この雪国での暮らしは決して無駄ではなかったと思う。こんな生活の中で、家族の絆も強まっていった。
過酷な自然環境の中でも、何の心配事もなく親に見守られていた幼い頃の思い出は、私にとってはかけがえのない宝物になっている。
こんな雪降る町での生活は、物心ついてから二十二歳まで続くことになる。
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