依存コード
ある日の事、二十数年間も必ず月に一度はサロンに来られていた方が、会員の退会の申し出をしてこられた。何かあったのかと心配する私への返事は、あやふやなメールが来て終わった。
その方は50代半ばのお客様で、つい最近人生の岐路に立たされ、それに対して私もどっぷり浸かり、一緒に悩んだり考えたりしたほどだったので、何となく私の心はスッキリしなかった。
夕食の時に掻い摘んで夫に、その話をした。すると夫は「仕事以外のことで深く関わり過ぎるから、そんな事でも一喜一憂するんじゃないの。お節介し過ぎではないのかな。プロなんだから、もっとビジネスライクに徹するべきと僕は思うよ」とキツ目の言葉が返ってきた。
たくさんの会員さんの入会や退会の申し出に、いちいち私が一喜一憂などしている訳ではないが、今回は特にそう感じられた。「私のお節介は子供の頃から通知表に書かれる位だったから、筋金入りのお節介なのだから仕方ないの」と夫に反論した。
しかしながら、私のその厄介な性格は何がお節介なのか、自分ではよく分からないのだから困ったものだと思う。そんな私だから色んな相談事を引き寄せてしまうのかもしれないと思った。
何年か前のことだが個人レッスンの、ボイストレーニングに通ったことがある。恥ずかしいので誰にも言わずに、内緒で始めたレッスン。何ヵ月かレッスンに通ったある日、レッスン中に先生から、離婚した時に夫の元に残してきたお子さんのことを相談された。私も相談されれば真剣に考える。
するとその内に、1時間のレッスンの半分は、悩み相談をされるようになってしまった。レッスンが終了すると毎回5千円のレッスン料を、支払って帰って来る。レッスンに行くことが何となく心が重くなり、数ヵ月後に辞めた。私の人生って一体何! 何か起きると、立て続けに色んなことが起きる。
ある方に「アナタは依存コードを結ばれやすい方なんですよ。だから色んな方が色んな問題を抱えてやって来る。それはある意味アナタ自身が試されているのですよ」と言われたことがある。
「依存コード……」。
言われてみたら、そうかもしれないと思うことが幾度となくあった。それはまるで申し合わせたように1、2ヵ月の間に5人の人が次々に「お金を貸して欲しい」と相談に来たことがある。
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