第一話 長老の予言

4 三種の神宝

二人には八人の娘がいたが、毎年この時期になると山奥から八岐大蛇(やまたのおろち)がやってきて娘を一人ずつ呑み込みに来るという。これまですでに七人の娘が犠牲になり、もうすぐこの最後の娘も八岐大蛇に呑み込まれる時期なのだという。それが悲しくて三人で泣いていたのだという。

八岐大蛇は、体は一つだが頭と尾は八つに分かれており、目はまるでほおずきのように真っ赤で、体には苔がむし杉や檜が生えている。長さは八つの尾根や谷をまたぐほどで、腹には真っ赤などす黒い血がこびりついている。それは恐ろしい姿だという。

須佐之男命は老夫婦と娘を助けるために、八岐大蛇と戦う覚悟を決めたのであった。

「その娘を、私の嫁にくれないか」

と爺に聞くと大いに驚いた。

「私はあなた様の名前も何も知りません」

「私は、天照大御神の弟で須佐之男命と申す。今高天原からおりてきたのだ」

それを聞いた足名椎は、

「それは恐れ多いことで、仰せのままにいたします」

と驚きながらも喜んで承諾したのだった。