第8章 混迷
大阪府の各保健所には、指定病院など地域の病院からタミフルや治療機材の要請の電話が殺到する。各病院で院内感染が蔓延し、多くの医師や看護師が罹患し医療レベルが低下していった。
第9章 破綻
ウイルスの感染拡大を防ぐために、不特定多数の集まる場所や集会の自粛など社会的な抑制がはじめられたが、交通機関などのインフラに大きな影響をもたらすことになった。WHOによるフェイズ6Bの宣言を受けて、厚生労働省は、11 月18日、フェイズ6Bの宣言を行った。
第10章 崩壊
11月30日、大阪市にある市立病院では、沢田副院長はじめ医療従事者が次々と倒れていった。多くの病院も同じような状態が続いた。
最も恐れた日本の医療崩壊がはじまったのである。
【感想】
岡田氏が描いたH5N1型インフルエンザウイルス日本上陸のシミュレーションの内容は、新型コロナウイルスの厄災に苦しんでいる日本の現状に酷似していることに驚く。
同時に、学ぶことの多いことに気づく。インフルエンザウイルスの脅威に対する日本人の危機感の希薄さや国、自治体の対策の遅れなどの指摘も鋭い。貴重な警告小説である。
『隠されたパンデミック』/岡田晴恵/幻冬舎文庫(2009年9月発行)
【作品概要】
小説『H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ』を世に出して新型インフルエンザウイルスの恐怖を警告した岡田氏が、行政の対策のまずさやワクチンの製造、備蓄などの諸問題を取りあげた小説。
【あらすじ】
国立伝染疾患研究所ウイルス部長の太田信之と部下の研究員・永谷綾が、「このまま対策が遅れてH5N1のプレパンデミックワクチンが間に合わない状態で新型インフルエンザがやってきたら致命的な手遅れになる」と国の新型インフルエンザウイルス対策の遅れについて嘆いていた。