Ⅲ 「感染小説」、その概要とあらすじ、私的感想
『H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ』/岡田晴恵/幻冬舎(2009年6月発行)
第3章 憂鬱
北海道H市の保健所長・酒井俊一は、「鳥インフルエンザ直近情報」という個人サイトに、海外の報道を翻訳し、掲載してインフルエンザ対策の啓蒙を行っている。
大阪市S区の保健所長・伊藤由起子は、医学部の同窓生の新型ウイルス対策に立ち向かっている姿を見て、伊藤自身も強く触発されていった。
東京都品川区の保健所長・向田ヒロミは、新型インフルエンザウイルス対策は行政を巻き込む必要があることを強調し、品川区でタミフルの備蓄を実現した。
第4章 発生
2007年10月、東南アジアのゲイマン共和国で新型インフルエンザが発生する。10月30日、WHOはパンデミック警戒レベル・フェイズを4に引き上げた。
日本ではフェイズ4の宣言を受け、備蓄ワクチンの接種が検討されはじめた。
第5章 上陸
雑貨の輸入商の柳 正一は、ゲイマン共和国から雑貨を輸入している。11月3日、ゲイマン共和国から福岡空港に到着した直行便から降り立った柳は、なんら健康状態に変調もなく自宅に帰り着いた。
ところが4日の午後自宅で倒れ込み、5日に感染症指定病院に入院でH5N1ウイルスに感染していることが判明した。厚生労働省から「フェイズ4B国内発生」の宣言が行われた。
第6章 拡大
大手の総合商社に勤務する木内純一は、海老の買い付けのためゲイマン共和国をしばしば訪れていた。今回の出張は、ゲイマン共和国で新型インフルエンザが発生し、成田までの直行便が取れず、香港経由成田行きの便に乗ることができた。
成田での検疫では問題なく通過した。帰国の翌日、会社の会議で高熱で倒れ、指定病院でH5N1型の感染が確認された。医師たちの治療もむなしく木内は死亡した。
第7章 連鎖
11月12日、厚生労働省は、福岡での最初の新型インフルエンザウイルス発生以来、首都圏内全域への拡大の現状を踏まえフェイズ5Bを宣言した。
大阪府では、発熱のため医療機関を受診する患者が一気に拡大していた。各地で発熱センターが設置され患者の診察に当たったが、どこのセンターも患者をさばききれない状態が続いた。