断食して三日、相変わらず水のような下痢が続いている。インドの風土病とも呼べるぐらい強い毒性を持った細菌は、日本では信じられないほどの生真面目さと力強さで、僕の体を一日中攻め続けている。ほんの束の間の休息もあるが、それは気休めでしかなかった。

そして僕を今一番悩ませているのは、この症状が噂に名高いインドの下痢ではなく、もっと恐ろしい病気……、例えば、腸チフスやコレラのような伝染病や、得体の知れない病(やまい)に罹ったのではないかという不安だった。

「そんなことはない、ただの下痢だ。もう少しで良くなる」と自分自身に言い聞かせても、不安感を消すことはできなかった。

日本にいれば誰かに相談することもできるし、病院に行けば済む問題だが、どう対処して良いか分からず途方に暮れる何日かを過ごしていた。

リシケシの生活にも慣れたこの頃は、インドの衛生状態の悪さや伝染病に罹る危険性をすっかり忘れていた。どこか、たかをくくっていたのかもしれない。しかし、今まで経験したものとは比べものにならない凄まじさに心身ともに参っていた。

ようやく下痢が治まったのは八日目の朝だった。朝目覚めて三十分が過ぎ、四十分が経過しても、ここ一週間続いた下痢の兆候はあらわれない。

僕はまたあの下腹部を突き刺すような痛みがやってくるのかと、どこか身構えていた。時計の針が九時を回り、起きてからちょうど三時間が経った。

「ああー。治ったみたいだ」

僕の心と体から、張り詰めていた緊張が解けていく。

「もう下痢に悩まされることはないだろう」