Ⅰ 1メートルの真ん中はどこですか

バランスを取ることができる人は優秀ですか

「一流の知性とは、相反する2つの思いを同時に持ちながら、その両方を機能させる能力のことだ」。

The test of a first-rate intelligence is the ability to hold two opposed ideas in the mind at the same time, and still retain the ability to function.

これは小説『華麗なるギャツビー』で有名な作家スコット・フィッツジェラルドが1936年に発表したエッセイ『壊れる(The Crack-Up)』の中で見つけたことばです。

頭の中に常に相反する思いがあり、最後にバランスを取った決断をして、大胆かつ慎重に行動する人には知性を感じます。

こういう人の頭の中には「天秤」が存在し、そこには相反するものがのっており、天秤は常にバランスをとる動きをしています。

その人が商売をやっている人であれば、天秤の片方にのっているのは、思想など目に見えないもので、もう片方にのっているのはお金など目に見える物だったりします。

私にも経験がありますが、このふたつのバランスをどう取ればいいか、とても悩みます。天秤にのったこのふたつのバランスを取りながら商売を続けるのはとても苦しいことです。

しかし苦しみながらも続けているとバランスを取ることが楽しくなってきます。人生、目の前は暗いから注意することが必要ですが、遠い未来は明るく感じるぐらいの方がいい。大胆プラス慎重、これが人生を生き抜く極意です。

1メートルの真ん中はどこですか

「1メートルの真ん中はどこですか」

そう尋ねられたら、あなたは何と答えますか。

「端から0・5メートルの部分」

多くの人がそう答えるでしょう。数学的にはそれが正解です。

しかし、これが物づくりの世界になると、正解ではなくなります。現実の物づくりの世界では「真ん中」という一点を特定することはできないからです。

現実の物づくりの世界では、こういう表現をするしかなくなります。「端から0・5メートル辺りを中心にしたある一定の幅を含む部分」

この話は、本田技研工業の創業者・本田宗一郎さんの伝記の中に、お父さんの言葉として出てきます。お父さんが若き日の宗一郎に理論の世界での正解と、物づくりの世界での正解は違うと教える言葉として出てくるのです。

 

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