はじめに

人間にとっていちばん大事なのは「モノの見方、考え方」です。

自分の人生のステージを上げるためには、常に自分の「モノの見方、考え方」に磨きをかけ、さまざまな困難にぶつかって鍛え上げることが重要です。

私は偶然の出会いがきっかけで31歳で中国から日本に来て、福井大学に入り、博士号をとりました。しかし幼い頃からの念願だった研究者の道へは進まず、もっとも縁がないと思っていた経営者の道を選ぶことにしました。37歳のときのことです。

39歳のときには腎臓ガンがみつかりました。手術の結果、完治し、20年以上たった現在も再発はしていません。ガンが見つかったとき、私は「運がいいから必ず治る。 70歳まで生きるんだ」と信じていました。

結果は私が強く念じていたとおりになりました。また創業後は、さまざまな失敗と成功を重ねてきました。

こうした中で多くの人と出会い、いろいろな経験をして、自分自身の「モノの見方、考え方」を鍛えあげてきました。その結果、私の中にさまざまな言葉が生まれました。

たとえばこんな言葉です。

●商売の基本は倒産しないこと

私は創業当時HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつくって中国で販売しようと計画して大失敗しました。周囲の日本人がいろいろと援助してくれて傷は最小限で抑えられました。

このとき会社経営でいちばん大切なことは、会社を倒産させないことだと知りました。法人としての会社は人間と似ています。生まれた子どもはやはり元気に育てていくのが何より重要です。

会社が倒産すると人が亡くなったことと同じです。夢はどれだけ膨らませてもいいが、一方で会社は絶対に倒産させてはいけないのだとわかったのです。

ほかに私が大事にしているものに、こんな言葉があります。

●人間の基本は健康。死なないことです。

健康を守るためには寝ること、食べること、それによって健康を維持し、そのうえで楽しむことがとても重要です。

私は酒は飲みません。好き嫌いはありません。食べられるものは何でも好きです。美味しいもの、贅沢なものを、という意味ではありません。若い頃は好き嫌いがありました。

なにしろ中国の田舎で生まれたので、魚や米を初めてたべたのは、18歳で大学に入ってからだったのです。幼い頃の主食は小麦です。具のない餃子のようにして食べていました。だから今でも魚は食べるのが苦手です。骨があるから。

自分が大切にしているこうした言葉をビジネスで知り合った人に話すとみな興味を示してくれます。そうするともっと多くの人に私の発見を伝えたくなってきます。

また、普段の身近な物事からじっくり観察してしっかり考えて仕事や暮らしに参考にできる道理を引き出して、自分の生き方に役立っていると思います。そこでこうした言葉を伝える本を書くことにしました。こんなちょっと変わった経営者の話に少しばかりお付き合いください。