第一章 壊れた家族

後日、恵理は、村役場の面接試験を受けた。

筆記試験はない。智子はやはり恵理が不合格になることを祈った。しかし、3日後学校に連絡があった。採用だ。野口は恵理の採用通知書を恵理に渡した。

「良かったな! 小川」

「先生がこの話をしてくれなかったら就職先がまだ決まらなかったかもしれない」「この採用通知書をお母さんに見せてあげなさい。これを見ると反対しないと思うよ」

「はい。ありがとうございます」

「4月1日から小川は村役場の職員だ。最初はアルバイトだけど、面談で言ったように勤務成績がいいと、正規で雇ってくれるかもしれないから頑張れ! 頑張れ!」

野口は喜ぶ恵理を見て、我がことのように喜んだ。毎年卒業生が進学し、連絡船で見送ってきたが、島内で就職もいいもんだなと目頭が熱くなるのを覚えた。

採用通知書を手に、恵理は家の畑に行き、農作業中の智子に見せた。智子は特に感動するということはなかったが、恵理の意志の強さを讃えたい気持ちはあった。

祐一は今朝、1度海を見に行ったが、海が荒れていて、「今日は釣れない」と諦めて家に戻っていた。昼間から島焼酎を飲んでいた。

「ただいま」

「お帰り」祐一はぶっきらぼうに言った。

「お父さん、私、役場の事務のアルバイトに採用されたの」