地域ごとに見る被害状況
本項目では、地域ごとの被害状況を見ていくが、当時の状況をよりリアルにお伝えするために、当時のメモを引用する。
陸前高田市
【2014 年 11 月視察より】
総延長およそ3kmのベルトコンベアーに驚愕した。二つの山を削り、街をゼロから作る。T.P. (東京湾水位から)12.5mの嵩上げを決定し、平成31年までに完成させる土木事業である。山から市街地へ、1日に10tトラック4千台分の量の土を運ぶ。総搬出量は2万m³。それは、人間による偉大な技術進歩の実践場のようにも見えたし、またむなしい自然への抵抗にも見えた。
昨年、陸前高田商工会が実施した意識調査「新しい中心市街地での出店意向確認調査」の結果が掲載されている陸前高田市報告会平成26年11月13日報告書によると130業者が戻ってくる意向を示している
(追記:震災前商工会議所に加盟していた事業所数は699。その内604か所が被災した。310か所が営業を再開。新たに設立した事業所も含め2021年1月末時点で540事業所と報じられている)。
目の前に展開する広大なハード事業の先で賑わいのある街が再開できるのか、私たち視察団は疑問視しながらも、その姿を想像し願う。それは、あまりに広大すぎる景色である。ハード主体の復興計画だけが目につく。人々が関わる生命的なソフト面がほとんど見えてこない。
「誰による誰のための復興事業なのか」。
地元の意識調査から見えるように、復興する街の大きさと税金を投与するバランスの取れた復興事業を展開すべきではないだろうか。これから尚、一層意見を交換しながら商店街の役割と在り方を考える必要があろう。これから建築開始されるまでの間は、未来の街を創造する大変重要な時期である。「奇跡の一本松」は、遠くからそれを見守りながら立っていた。
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2014年11月:嵩上げ工事、延べ3kmのベルトコンベアー
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2019年10月:震災8年後の工事風景。津波は塔屋まで達した(家主塔屋に避難、助かる)