四人組
部活の一年男子は四人しかいないけど、学校からの帰りはいつも一緒で、クラスの友達よりもずっと仲がよかった。正月には初めて外で集まって遊びに行った。部活のない試験期間中も待ち合わせて一緒に帰っていたし、互いの家族のことも知っていた。
春休みに入ってすぐ、四人組で地元に近い中学と高校の吹奏楽部の定期演奏会に行った。高校の定期演奏会は桃井先輩が合格した高校で、ロビーで桃井先輩に会った。先輩は「この部活に入るつもりなの」と言っていた。初めて見る私服姿の桃井先輩はずいぶん大人に見えた。
高校の定演を見終わって、夜道を四人で固まって歩いて帰るとき、ソロの演奏レベルのすごさを話したあとで、意外なことに全体的には昨日行った中学校の方がうまいとみんなが思ったことだ。
「でも」と思ったのは僕だけではなかった。安藤君がぽつんと「今日の高校生はみんな楽しそうだったよな」と言った。「うん、そう見えた」と僕と川井君が言ったし、神田君もうなずいた。
僕が「あの中に入って吹いたら楽しいだろうな」と言ったら、安藤君が「ちょっとうらやましかったな」と寂しそうに言った。高校の部活は僕たちとは別の世界みたいだった。四人が自分の感情を整理しているみたいで黙りがちに歩いた。中学生と高校生の違いなんだろうか。
急に安藤君が「そうだっ」と大きな声で言って、立ち止まった。
「ドラムセット、買えそうなんだ」
安藤君は練習用パッドでは物足りなくなって、ドラムセットが欲しいと言い出していた。
でも近所迷惑だからと家で言われて困っていることは三人とも知っていた。
「思い付きで消音板を作ったんだ。それがさあ、いいんだよ。CDをガンガン鳴らして試したらすごく効果があってさあ。とりあえずドラムセットを買ってもいいってことになったんだ」
三人とも手作りの消音板のイメージが全然湧かなかった。
「今度の土曜日に父さんと中古ドラム、買いに行くんだ」「よかったじゃーん」口々に言ったけど、話はここからだった。