お前については、いろいろ考えた、一案がある

私に付いて来い、お前を案内してやる

ここから、お前を地獄に連れていく

  

そこでお前は、絶望の叫びを聞くだろう、 

呵責に悩む古代の人々の亡霊を見るだろう、

皆、第二の死を叫び求めているのだ

また煉獄の炎の中にあって、満足している人々も見るだろう

  

いつかわからないが、幸ある人の群れに、

入れてもらえるという望みを繋いでいるのだまた、天国にも昇りたいのなら、

それには私よりも立派な方がおられるから、

別れ際に、お前をその方にお任せするとしよう

というのも、天上におわします〝存在〟は、

私がその掟に背いた前科がある以上、

人が私ごときの案内で、天国に入るのを希望しない

〝存在〟は、あらゆる場所、場面に君臨し統治する

そこに城があり、玉座がある

〝存在〟に選ばれ天国に行ける者は幸せである」

    

そこで私は言った、「ウェルギリウスよ、先達よ、先生よ、父静馬よ、お願いです、

あなたが言われた、地獄と煉獄に私を連れていってください

これ以上健康を害わないように

今、言われた場所にお連れください

どうか、サン・ピエトロの門や

あなたが話された、いとも叫喚な世界をお見せください」

   

すると父は歩き出した、そして、私は父の後ろに従った

 

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