心から好きだったのに

モデル 思ったことが全部顔に出ちゃう人たち 全員二五歳

彼はテレビゲームが好きすぎて 小学校低学年の頃から毎日十時間以上遊んでいた

時には親にこっぴどく叱られて ゲーム機を窓の外へ投げ捨てられたこともあった

それでも 学校の勉強はほったらかし ゲーム熱は全く冷めなかった

やがて好きが高じて 中学卒業後にプロゲーマーになった

さぞや今頃 愉快な人生を送っているのだろうと思っていたら

その道のプロになった途端 楽しめなくなった 苦痛になったそうだ

どうやら 大会やイベントのスケジュールを優先して練習を組まなくてはならず

所属チームの勝利や宣伝のために 

自分の関心や希望に関係なく 新しい大技や戦法の習得を常に求められる

そうでなければ 契約を解除される 

自分のペースでプレイできなくなったことが 主な理由らしい

彼は野球が好きすぎて

小学校中学年の頃から 雨の日も風の日も 土日も祝日も

近所のグランドに足繁く通っていた

時には 学校の定期テスト前であっても

教科書をろくに開かず 野球の雑誌や技術書ばかり読みふけっていたので

さすがに親に怒られて バットやグローブを隠されたこともあった

 

それでも 全く懲りなかった

やがて好きが高じて 高校卒業後にプロテストに合格した

さぞや今頃 充実した人生を送っているのだろうと思っていたら

その道のプロになった途端 楽しめなくなった 苦痛になったそうだ

どうやら 数字や結果を常に求められ

同じ球団のライバルや 同じリーグの対戦相手の 弱点やクセの研究や分析に

膨大な時間を費やされる

ちょっとでも怠けると あっという間に ふるい落とされる

厳しい競争とプレッシャーに晒され続けることが 主な理由らしい

 

彼女は旅行が好きすぎて 小学校高学年の頃から

世界地図を飽きるくらい眺めたり

旅番組を片っ端から録画しては 繰り返し視聴したりしていた

学校の成績は 地理と英語だけが ずば抜けて得意で

それ以外の教科との差が激しかった

時には 親に心配されて 家庭教師を無理矢理あてがわれたこともあった

それでも 全く点数は伸びなかった

 

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