薄っぺらなブルーダイヤ

「ごめん、その日は会議があるから休めないんだ。その次の週じゃだめ?」

少し意地悪をしたくなって、雪子は首をかしげた。

「えぇ、どうしよう。その日以外はしばらく旦那さん、出かける予定ないんだ。ご飯作ってあげないとだから、旅行は難しいかも」

オロオロしながら、愛弓が早口でまくし立てる。

「へぇ、そっかぁ」

あの太った冴えない薄毛旦那にそこまで尽くせるなんて、信じられない。本当は背が高くて男前な伸親のような男がタイプのくせに、一生懸命、初彼氏で夫のトド男に尽くしている愛弓は、見ていて愉快だ。妥協して可哀想と、耳元で囁いてやりたくなる。

「土曜日に日帰りにしようか。晩ご飯の準備があるから、近場でちょっと早めに帰ることになるけど」

「うーん、でもそれって、旅行とは言わないよね」

「……だよね。でも」

「わかった。会議の日、ずらせるか調整してみるね」

「ほんと? ありがとう、雪さん」

途端に顔を輝かせて、ずずっとミックスジュースを飲む。