薄っぺらなブルーダイヤ

ステンドグラスの窓が特徴的な影を床に落としている。極彩色の光のうねりが、今の気分にぴったりだ。

「いい喫茶店だね、愛弓」

「そう? 雪さんに気に入ってもらえてよかった」

ミックスジュースを飲んでいた愛弓が、太くて短い首を器用に竦める。

それ、亀みたいに見えるからやめたほうがいいよ、という言葉が喉まで出かかって、雪子は慌ててクリームソーダを飲み込んだ。

「実は旦那さんが仕事の帰りによく寄る店なんだ」

愛弓がはにかみながらどうでもいいことを言う。結婚して少し太ったのか、ただでさえ細い一重の瞳が、頰に埋まって皺みたいに見える。

「へぇ、寄ってから帰るの? まだ新婚なのに」

「うん。私ってほら、お料理あんまり上手くないでしょ。ここ、食事のメニューも充実してるから」

「合理的と言えば合理的だけど、いいの? それなら共働きなんだし、旦那さんが作ればいいのに」

雪子はわざと怒ったような顔をしてみせた。愛弓は「いいの、いいの。私なんて定時帰りだし、本当に料理下手だし」と、慌てたそぶりで旦那のフォローをする。

せっかく味方をしてやったのに嚙み合わないなと思ったが、気にはしない。月に一度の女子会だ。こういう苛立ちも楽しいスパイスとなる。

それに愛弓が空気を読めないのは、今に始まったことではない。昔からクラスの女の子たちに失笑とともに見放されていても、それにすら気づかないような子だった。でも雪子は、愛弓のそういう愚鈍で正直なところが気に入っている。判で押したような子たちと話していても、退屈なだけだ。

「それよりだめだよ、雪さん。あんなすてきな旦那様がいるのに、その後輩くんが気になるなんて」