年寄りの感想を一度吐き出したところで、どうもこれは病気や障害によって不都合の生じた人が実際の職場でうまく働けていないという事態ではなく、働くことに対する若者の内在的変化と現代の就労環境の変化が折り重なった事態ではないのかという考えに至ります。

高度経済成長で景気のよかった時から働いていた年寄りにはどうも理解しにくい事態であり、反面そのスタンスが当然だと思うと、現在の就労環境の変化も見えにくくなってしまいます。その狭間で若者は、働くことに病んでいく、そんな印象です。

〈ちょいたし②〉パワハラ防止法って、何?

このような話になると、どうしても神経質になってしまうのは、パワハラではないでしょうか。若者=訴える側、年寄り=言われる側という図式ができてしまいがちですが、この雲をつかむような職場の言動に、一応の定義ができました。

令和2年に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」通称「パワハラ防止法」ができました。以下の三つのポイントすべてを満たすと、パワハラと認定されます。

①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超える言動

③労働者の就労環境が害される言動

それぞれ判断の難しいところはありますが、優越的な関係は上司と部下に限っていません。同僚や部下からも含まれます。逃れられない職場の人間関係全般ということになります。言動が必要かつ相当な範囲かというのも難しいですが、今は言い方や頻度などの目安も考えられています。

そして、それらの言動によってどのように就労環境が害されたか明確にすることも必要です。イヤな言われ方をしたから即「パワハラです」と合言葉のように言っても説得力に欠けます。仕事上の人間関係をどのように築いていくのか、お互いに萎縮したり、かかわらないようにしたり、果ては脅し文句に使ったりしないように、パワハラを取り巻いている雲を晴らしていければいいなと思います。

【前回記事を読む】叱られると過呼吸に。優しい慰めむなしく退職。「泣いてリセット」ができず、仕事の辛さへの反応が身体や精神的症状に出る若者たち。

次回更新は2月5日(水)、8時の予定です。

 

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