これを何とかしなければ地獄が待っているのだ。実知は布団ごと知数を強く揺さぶった。

「知数、起きてちょうだい。ここに座って。お母さんの話を聞いて、考えてちょうだい。私は本気よ。お前が元気になるなら、私の命なんかいらないと思っている。命をかけて、お前と話し合いたいの、それができなければどうなるかわかっているじゃないの。

お前も私もお父さんも、先がなくなるだけなのよ。私たちは、だから、選ばなければいけないの。元気になるために手を打つか、このまま真暗な地獄に落ちていくか、選ばなければ、自分で決めなければならないところに来ているのよ。

その選択に気付かなかったから、未知夫君はああなってしまった。お気の毒だった。せめて私が少しでも気付いていれば、役に立つことを言ってあげられたと思うと、胸が痛むの。

でも、未知夫君も私を助けてくれているような気がする。私に力を貸してくれているのがわかる。未知夫君は命を懸けて私たちに教えてくれたのよ。それを無駄にしてはいけない。私も最近は死ぬことばかり考えていたけれど、それじゃダメなのね、自分の選択を放棄したことになるもの」

話しながら、実知は激しく知数を揺さぶった。

反応はなかった。実知の心にわずかに空しい空気が流れた。力を込めて話した余波が空白を作ったのだ。けれど実知は怯(ひる)まなかった。

深く息を吸って心を立て直すと、今度は静かに話した。